口ゴボ(上下顎前突や両顎前突)の状態が、なぜほうれい線を目立たせることにつながるのでしょうか。そのメカニズムにはいくつかの要因が考えられます。まず、口元が前方に突出していると、口唇を自然に閉じることが難しくなり、意識的に口を閉じようとする際に、頤(おとがい)筋などの口周りの筋肉に過剰な力が入ります。この慢性的な筋肉の緊張は、皮膚を引き込み、ほうれい線の溝を深くする方向に作用します。特に、頤部に梅干しジワができるような方は、この傾向が強いと考えられます。次に、骨格的な要因です。上顎骨や下顎骨が前方に位置していると、その上に乗っている軟組織、つまり頬の肉も前方に押し出される形になります。これにより、鼻唇溝(びしんこう)、つまりほうれい線の部分が相対的に窪んで見えたり、頬の肉がたるんでほうれい線にかぶさるように見えたりすることがあります。例えるなら、テントの支柱が前に傾いていると、テントの布にしわ寄せがいくのに似ています。さらに、口ゴボの方は口呼吸の傾向が見られることがあります。口呼吸が習慣化すると、口輪筋などの口周りの筋肉が弛緩しやすくなり、顔全体のたるみを引き起こす可能性があります。筋肉のハリが失われると、皮膚を支える力も弱まり、ほうれい線がより目立ちやすくなります。また、口ゴボの治療として歯列矯正を行う場合、歯を後方に移動させることで口元が下がり、口唇閉鎖が容易になります。これにより、口周りの筋肉の過緊張が緩和され、結果としてほうれい線が浅く見えるようになることが期待できます。ただし、ほうれい線の原因は口ゴボだけではなく、加齢によるコラーゲンやエラスチンの減少、皮膚の乾燥、紫外線ダメージ、表情の癖なども複雑に関与しています。したがって、口ゴボの改善がほうれい線にどの程度影響するかは個人差があり、総合的なアプローチが必要となる場合もあります。