本日は、歯列矯正を専門とされるE歯科クリニックのF先生に、矯正治療に伴う痛みについて詳しくお話を伺います。先生、歯列矯正というと「痛い」というイメージが強いのですが、実際にはどのような痛みが、どの程度の期間続くものなのでしょうか。はい、歯列矯正治療において、ある程度の痛みを感じることは避けられないのが現状です。主な痛みとしては、まず、歯が動くことによる痛みがあります。これは、矯正装置によって歯に持続的な力が加えられ、歯根膜という歯と骨の間にある組織が圧迫されたり引っ張られたりすることで生じる炎症反応のようなものです。特に、装置を初めて装着した時や、ワイヤーを交換・調整して力を強く加えた後の2~3日をピークに、1週間程度続くことが多いです。この痛みは、ズキズキとしたり、歯が浮いたような感じだったり、噛むと響くような鈍痛であったりします。もう一つは、矯正装置が口の中の粘膜、例えば頬の内側や舌、唇などに当たったり擦れたりすることで生じる物理的な痛みや口内炎です。これは、装置に慣れるまでの間や、ワイヤーの端が突出した場合などに起こりやすいです。痛みの感じ方には非常に個人差があり、同じ治療を受けていても、ほとんど痛みを感じない方もいれば、日常生活に支障が出るほど強く感じる方もいらっしゃいます。これは、その方の痛みの閾値(いきち)や骨の代謝、歯周組織の状態などが影響すると考えられています。私たち歯科医師は、痛みを最小限に抑えるために、可能な限り弱い力で効果的に歯を動かすよう努めていますし、装置が粘膜に当たらないような工夫も行っています。また、患者さんには、痛みが出た場合の対処法として、痛み止めの服用や矯正用ワックスの使用、食事の工夫などを具体的にお伝えしています。大切なのは、痛みを我慢しすぎず、辛い時には遠慮なく相談していただくことです。治療計画の中で予測される痛みなのか、あるいは何か別の問題が生じているのかを判断し、適切に対処することが、患者さんの不安を軽減し、治療をスムーズに進める上で非常に重要だと考えています。