ゴムかけが導いた理想の噛み合わせ

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Sさんは、長年、上の前歯が下の前歯よりも大きく前に出ている、いわゆる「出っ歯」の状態に悩んでいました。見た目のコンプレックスはもちろん、食事の際に前歯で食べ物を噛み切りにくいという機能的な問題も抱えていました。矯正歯科での精密検査の結果、Sさんのケースでは、上顎の歯列全体を後方に移動させる必要があり、そのために「ゴムかけ」が非常に重要な役割を果たすと診断されました。治療計画では、まずブラケットとワイヤーを装着して歯を大まかに整列させた後、上顎の犬歯付近に取り付けられたフックと、下顎の奥歯に取り付けられたフックの間に、患者さん自身が毎日ゴムをかけることになりました。このゴムの力によって、上顎の歯列全体を後方に引っ張り、同時に下顎の歯列をわずかに前方に誘導することで、上下の顎の前後的なズレを改善し、理想的な噛み合わせを目指すというものでした。Sさんは歯科医師の指示通り、食事と歯磨きの時以外は常にゴムを装着し、毎日新しいゴムに交換することを忠実に守りました。最初の数週間は、ゴムによる持続的な牽引力で歯が浮くような痛みや、顎のだるさを感じましたが、歯科医師からの「これは歯が計画通りに動いている証拠ですよ」という励ましを支えに、根気強く続けました。数ヶ月が経過する頃には、鏡を見るたびに上の前歯が少しずつ後退し、口元の突出感が改善されていくのが目に見えてわかりました。それと同時に、以前は噛み合わせにくかった前歯でも、しっかりと食べ物を捉えられるようになってきたことを実感しました。約1年間にわたるゴムかけ期間を経て、Sさんの歯並びと噛み合わせは劇的に改善しました。上の前歯は理想的な位置まで後退し、下の前歯と適切に被さるようになりました。横顔のラインも美しく整い、長年のコンプレックスだった口元の突出感は解消されました。Sさんは、「ゴムかけは確かに大変だったけれど、その努力がこれほど明確な結果に繋がるとは思わなかった。諦めずに続けて本当に良かった」と、満足そうに語っています。