税理士が解説歯列矯正と医療費控除のポイント

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歯列矯正の費用が医療費控除の対象になるか否かは、多くの人が関心を持つ点です。税理士の立場から、この医療費控除の適用における重要なポイントを解説いたします。まず、大前提として、医療費控除は納税者自身または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が対象となります。歯列矯正の場合、その目的が「治療」であると認められることが不可欠です。単に見た目を良くするための美容目的の矯正は、原則として医療費控除の対象にはなりません。この「治療目的」であるかどうかの判断は、主に歯科医師が行います。具体的には、噛み合わせの不良による咀嚼機能の低下、顎関節への負担、発音障害の改善、あるいは成長期の子どもの顎骨の正常な発育を促すための矯正などが該当します。歯科医師が治療の必要性を認めた場合、その旨を記載した診断書を発行してもらうことが、税務署に対して治療目的であることを示す上で有効な手段となります。次に、医療費控除の対象となる費用についてです。矯正装置の費用、診察料、検査料、調整料はもちろんのこと、通院にかかった公共交通機関の交通費も含まれます。ただし、自家用車での通院にかかるガソリン代や駐車場代は対象外です。また、デンタルローンやクレジットカードで分割払いした場合でも、信販会社が立て替えた金額が、その立て替えた年の医療費控除の対象となります。金利や手数料は対象外ですので注意が必要です。医療費控除を申請する際には、治療費の領収書や診断書(税務署から求められた場合)、交通費の記録などを整理しておくことが重要です。確定申告の際には、医療費の明細書を作成し、申告書に添付して提出します。近年はe-Taxによる電子申告も普及しており、手続きが簡便になっています。不明な点があれば、管轄の税務署や税理士に相談することをお勧めします。適切な手続きを行うことで、高額な歯列矯正費用の一部が還付される可能性があるため、諦めずに確認してみましょう。