しゃくれ(下顎前突・反対咬合)の歯列矯正治療を受けるにあたり、治療中の痛みやダウンタイムについて不安を感じる方は少なくないでしょう。どのような治療法を選択するかによって、痛みやダウンタイムの程度は大きく異なります。まず、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった、歯の移動を中心とした歯列矯正の場合、装置を初めて装着した時や、調整を行った後(ワイヤーを締め直したり、新しいマウスピースに交換したりした後)、数日間は歯が浮くような、あるいは締め付けられるような痛みや違和感が出ることがあります。これは歯が動いている証拠であり、通常は数日で治まります。痛みの感じ方には個人差がありますが、我慢できないほどの強い痛みではなく、必要に応じて痛み止めを服用することで対処できます。食事の際に、硬いものが食べにくかったり、話しにくさを感じたりすることもありますが、これらも徐々に慣れていきます。特に大きなダウンタイム(日常生活に支障が出るような期間)はありませんが、口内炎ができやすい方は、装置が粘膜に擦れて口内炎ができることがあるので、矯正用ワックスなどで保護するなどの対策が必要です。一方、骨格的なしゃくれを改善するために「外科的矯正治療(顎変形症治療)」を受ける場合は、顎の骨を切る手術を伴うため、相応の痛みとダウンタイムが生じます。手術は全身麻酔下で行われ、術後数日間は顔の腫れや痛みが強く出ることが一般的です。食事も、最初は流動食から始め、徐々に柔らかいものへと移行していく必要があります。入院期間は、手術の内容や術後の経過によって異なりますが、1週間から2週間程度が目安です。退院後も、しばらくは顔の腫れや内出血が続きますし、口が開きにくい、感覚が鈍いといった症状が出ることもあります。日常生活に完全に復帰できるまでには、数週間から数ヶ月かかることもあります。ただし、手術技術の進歩により、以前に比べて痛みや腫れは軽減される傾向にありますし、術後のケアも進化しています。どちらの治療法を選択するにしても、治療に伴う痛みやダウンタイムについては、事前に歯科医師や口腔外科医から十分な説明を受け、理解しておくことが大切です。不安な点があれば、遠慮なく質問し、納得した上で治療に臨むようにしましょう。