マウスピース矯正とほうれい線の関係歯科医の見解

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マウスピース矯正とほうれい線の関係について、歯科医師はどのように考えているのでしょうか。多くの歯科医師の見解としては、「マウスピース矯正が直接的な原因となって、新たにほうれい線ができる、あるいは既存のほうれい線を悪化させるという科学的根拠は乏しい」というものです。ほうれい線は、主に皮膚や皮下組織の構造的な変化、加齢、生活習慣などが複雑に関与して形成されるものであり、歯列矯正装置の装着がその主たる原因となることは考えにくいとされています。しかし、歯科医師も、矯正治療の過程で患者さんがほうれい線を気にされるケースがあることは認識しています。その理由として考えられるのは、まず「口元の変化」です。特に、抜歯を伴う矯正治療で前歯を大きく後退させた場合、口元の突出感が改善される一方で、相対的に頬のボリュームが減ったように感じたり、皮膚のわずかなたるみが生じたりすることで、ほうれい線が目立ちやすくなったと感じる可能性があります。これは、歯の移動に伴う顔貌の変化の一環であり、必ずしもネガティブな変化とは限りませんが、患者さんの受け止め方によっては気になるポイントとなり得ます。次に、「表情筋の変化」です。マウスピースを装着している間、無意識のうちに口周りの筋肉の使い方が変わることがあります。例えば、アライナーに違和感を感じて口元に力が入ったり、逆に表情が乏しくなったりすることで、一時的にほうれい線が目立つように感じることがあるかもしれません。また、「心理的な要因」も無視できません。矯正治療中は、自分の顔、特に口元に意識が向きやすくなるため、それまであまり気にしていなかったほうれい線が、急に気になるようになるということも考えられます。歯科医師は、これらの可能性を考慮しつつ、患者さんの不安に寄り添い、丁寧なカウンセリングを行います。もし、ほうれい線が気になる場合は、治療計画の段階で、口元の変化の予測について詳しく説明を受けたり、治療中に懸念を伝えたりすることが大切です。必要であれば、表情筋のトレーニングや、美容皮膚科など他科との連携も視野に入れることがあるかもしれません。