歯列矯正を始めて早半年。キラキラした理想の歯並びを夢見てスタートしたものの、現実はなかなかにシビアだ。特に私を悩ませるのは、月に一度の調整日とその後の数日間。先生が「はい、ちょっと締めますねー」とワイヤーをキュッと引っ張った瞬間から、私の歯はまるで「これから本気出すぞ!」と宣言するかのように、じわじわと存在感を主張し始める。その日の夜はもう大変。普段なら美味しくいただけるはずの夕食も、前歯で噛み切ろうものなら「イテテテ!」と声が出る始末。結局、豆腐とか、お粥とか、噛まなくても飲み込めるような、いわゆる「介護食」みたいなメニューに落ち着く。友達との食事の約束も、調整日直後は「ごめん、今週はちょっと…」と断ることが増えた。せっかく美味しいものを目の前にしても、痛くて心から楽しめないのが悔しいのだ。そして地味に辛いのが、口内炎。ブラケットが頬の内側に擦れて、気がつくと小さな白い craters ができている。これがまた、喋るたびに、食べるたびに、絶妙なタイミングで刺激されて痛い。矯正用ワックスという救世主はあるものの、食事をすると取れてしまうし、付け直すのもひと手間だ。でも、そんな痛い日々の中にも、小さな喜びはある。ふと鏡を見たとき、ほんの少しだけ歯が動いているのを見つけた時とか、以前はガタガタだった歯並びが、少しずつアーチ状に整ってきているのを感じた時とか。その瞬間は、調整後の痛みも、口内炎のちくちくも、全部忘れて「やっててよかった!」って心から思える。それに、痛みがあるということは、歯がちゃんと動いてくれている証拠なんだって、先生も言っていた。だから、痛いのは辛いけど、これも理想の笑顔を手に入れるための試練なんだって、自分に言い聞かせている。次の調整日まであと数日。またあの痛みがやってくるのかと思うと少し憂鬱だけど、終わった後の達成感と、ちょっと綺麗になった歯並びを想像して、なんとか乗り切ろうと思う。