こどもの歯列矯正には、将来の健康やQOL(生活の質)向上に繋がる多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを総合的に理解した上で、治療を開始するかどうかを判断することが大切です。まず、メリットとしては、「顎の成長を利用できる」点が挙げられます。特にⅠ期治療(早期治療)では、顎の骨がまだ柔らかく成長途中であるため、顎の成長を正しい方向に導いたり、成長をコントロールしたりすることが可能です。これにより、受け口や出っ歯といった骨格的な問題を根本から改善しやすくなり、将来的な抜歯や外科手術のリスクを減らせる可能性があります。また、「永久歯が綺麗に生え揃うためのスペースを確保できる」のも大きなメリットです。顎の幅が狭い場合に拡大装置などを用いることで、歯がガタガタに生えるのを防ぎ、スムーズな永久歯への交換を促すことができます。さらに、「悪習癖(指しゃぶり、舌突出癖、口呼吸など)の改善」にも繋がります。これらの癖は歯並びや顎の成長に悪影響を与えるため、早期に改善することで、より良好な口腔環境を育成できます。「虫歯や歯周病のリスク低減」も期待できます。歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、プラークコントロールが向上するためです。「心理的なメリット」も大きく、コンプレックスが解消されることで、自信を持って笑顔になれるようになり、積極性が増すこともあります。一方、デメリットとしては、まず「治療期間が長くなる可能性がある」ことです。Ⅰ期治療とⅡ期治療の両方が必要になる場合、トータルの治療期間は数年に及ぶことがあります。また、「お子様自身の協力が不可欠」である点も重要です。装置の装着時間を守ったり、口腔ケアを丁寧に行ったりするには、お子様の理解と協力が欠かせません。これが得られないと、治療が計画通りに進まないことがあります。「費用の負担」も考慮しなければなりません。歯列矯正は基本的に自由診療であり、決して安価な治療ではありません。「痛みや違和感」も伴います。装置の装着や調整後には、一時的に痛みや話しにくさ、食事のしにくさなどを感じることがあります。これらのメリット・デメリットを天秤にかけ、歯科医師と十分に話し合い、お子様の意思も尊重しながら、治療を進めていくことが望ましいでしょう。