歯列矯正によるしゃくれ治療の種類と特徴

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しゃくれ(下顎前突・反対咬合)を歯列矯正で治療する場合、いくつかの方法があり、それぞれに特徴があります。患者さんの年齢やしゃくれの原因、程度によって最適な治療法が選択されます。まず、成長期のお子様(主に6歳~12歳頃)のしゃくれ治療では、顎の成長を利用した「Ⅰ期治療(早期治療)」が行われることがあります。この時期によく用いられる装置としては、「チンキャップ」があります。これは、下顎の先端(オトガイ部)にカップを当て、頭部からゴムで引っ張ることで、下顎の過剰な前方成長を抑制する効果が期待できる装置です。主に就寝時など、家庭での装着が中心となります。また、「上顎前方牽引装置(じょうがくぜんぽうけんいんそうち)」も用いられます。これは、おでこと顎に固定源を置き、口腔内の装置とゴムで連結することで、上顎の成長を前方に促す装置です。上顎の成長が不十分なために相対的に下顎が出ているように見える場合に有効です。これらの装置は、骨格的な改善を目指すもので、早期に治療を開始することで、将来的な外科手術のリスクを軽減できる可能性があります。次に、永久歯が生え揃ってから行う「Ⅱ期治療(本格治療)」や、成人の方のしゃくれ治療では、主に「ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)」や「マウスピース矯正(インビザラインなど)」が用いられます。ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットという小さな装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かす方法で、様々な不正咬合に対応できる確実性の高い治療法です。しゃくれの治療では、下の歯を後方に移動させたり、上の歯を前方に移動させたりすることで、正しい噛み合わせを目指します。必要に応じて、抜歯やアンカースクリュー(小さなネジ状の固定源)を併用することもあります。マウスピース矯正は、透明なマウスピースを段階的に交換していくことで歯を動かす方法で、目立たないのが大きなメリットです。軽度から中程度の歯性のしゃくれであれば、マウスピース矯正でも治療可能な場合がありますが、歯の移動量が多い場合や複雑なコントロールが必要な場合は、ワイヤー矯正の方が適していることもあります。これらの歯列矯正だけで改善が難しい骨格性のしゃくれの場合は、前述の通り「外科的矯正治療」が選択されます。