手軽に始められるイメージのあるマウスピース矯正ですが、特に「安い」ことを前面に打ち出したプランには、思わぬ落とし穴やリスクが潜んでいることがあります。安易に飛びついて後悔しないために、事前に知っておくべき点をまとめました。まず、最も大きなリスクは「不十分な治療結果」です。安いプランの多くは、治療範囲が限定的であったり、アライナーの枚数に上限があったりするため、根本的な歯並びや噛み合わせの問題が解決されないまま治療が終了してしまう可能性があります。見た目には少し改善されたように見えても、機能的な問題が残っていたり、すぐに後戻りしてしまったりするケースです。次に、「歯や歯周組織へのダメージ」のリスクです。歯列矯正は、歯に力を加えて動かす医療行為であり、不適切な診断や治療計画のもとで行われると、歯根吸収(歯の根が短くなる)、歯肉退縮、顎関節症の悪化といった深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。特に、歯科医師の十分な診察や管理が行き届かない安価なプランでは、このようなリスクが高まる傾向にあります。また、「追加費用の発生」もよくある落とし穴です。初期費用は安くても、治療の途中で追加のアライナーが必要になったり、保定装置(リテーナー)が別途高額だったり、あるいはトラブル発生時の対応に費用がかかったりして、最終的な総費用が当初の予想を大幅に上回ってしまうことがあります。契約前に、総額でいくらかかるのか、追加費用が発生するケースとその金額について、明確に確認しておくことが重要です。さらに、「サポート体制の不備」も問題となることがあります。治療中に疑問や不安が生じた際に、気軽に相談できる窓口がなかったり、歯科医師による適切なフォローアップが受けられなかったりすると、安心して治療を続けることができません。特に、オンライン中心のサービスでは、対面でのきめ細やかなサポートが期待できない場合もあります。「誇大広告や誤解を招く表現」にも注意が必要です。「誰でも簡単に」「短期間で必ず治る」といった甘い言葉には警戒し、治療の限界やリスクについてもきちんと説明してくれる、誠実な医療機関を選ぶようにしましょう。安いマウスピース矯正には、それなりの理由があることを理解し、価格だけでなく、治療の質や安全性、サポート体制などを総合的に比較検討することが、失敗を避けるための賢明な判断と言えます。
安いマウスピース矯正の落とし穴とリスク