歯列矯正は、美しい歯並びを目指すだけでなく、噛み合わせの改善を通じて全身の健康にも寄与する大切な治療です。しかし、その費用は決して安価ではないため、経済的な負担を感じる方も少なくないでしょう。そこで知っておきたいのが、歯列矯正費用が医療費控除の対象となる場合があるということです。医療費控除とは、一年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、その超えた金額に応じて所得税や住民税が軽減される制度です。歯列矯正がこの医療費控除の対象となるかどうかの鍵は、その矯正が「治療目的」であると認められるか否かにかかっています。単に見た目を美しくするためだけの美容目的の矯正は、残念ながら医療費控除の対象外となります。しかし、噛み合わせが悪く食事の咀嚼に支障がある、発音が不明瞭である、顎関節に負担がかかっているなど、医学的な観点から治療が必要と歯科医師が判断した場合には、その費用は医療費控除の対象となる可能性が高まります。特に、成長期にあるお子様の歯列矯正は、顎の骨の健全な発育を促し、将来的な不正咬合による様々な問題を予防するための「治療」と見なされやすいため、医療費控除の対象となるケースが多いです。大人の方の場合でも、歯科医師が治療の必要性を認めた診断書があれば、医療費控除の申請が可能です。確定申告の際には、治療費の領収書はもちろん、歯科医師の診断書、通院にかかった交通費の記録なども必要になる場合がありますので、大切に保管しておきましょう。歯列矯正をお考えの方、あるいは既に治療を受けている方は、ご自身のケースが医療費控除の対象になるか、一度担当の歯科医師や税務署、税理士に相談してみることをお勧めします。適切な手続きを踏むことで、経済的な負担を少しでも軽くできるかもしれません。