長年、私は顎の不調と付き合ってきました。食事の時にカクンと音が鳴るのは日常茶飯事で、ひどい時には口がスムーズに開かなくなり、無理に開けようとするとズキッとした痛みが走ることもありました。特に硬いパンをかじったり、あくびを大きくしたりする瞬間は恐怖でした。歯並び自体はそこまでコンプレックスに感じていたわけではありませんが、歯科検診で噛み合わせのバランスが良くないと指摘されたことがあり、もしかしたらこの顎の不調と関係があるのかもしれないと心のどこかで思っていました。そんな時、友人が歯列矯正で噛み合わせが良くなったら、長年悩んでいた肩こりまで改善したという話を聞き、藁にもすがる思いで矯正専門の歯科医院の門を叩いたのです。カウンセリングでは、まず私の顎の状態を徹底的に調べられました。レントゲンはもちろん、顎の動きを精密に記録する機械を使ったり、どの筋肉が痛むのかを丁寧に触診したりと、これまでに受けたことのない詳細な検査でした。その結果、私の顎関節症の症状は、やはり噛み合わせの不調和が一因となっている可能性が高いとの診断でした。先生からは、歯列矯正によって噛み合わせを正しい位置に導くことで、顎への負担が軽減され、症状が改善する見込みがあると説明を受けました。同時に、治療中に一時的に症状が悪化するリスクや、必ずしも完治するわけではないという現実的な側面も伝えられ、正直不安も大きかったです。しかし、このまま顎の不調を抱えて生活するよりも、少しでも改善の可能性があるなら挑戦したいという気持ちが勝り、歯列矯正を開始することを決断しました。矯正装置を装着した当初は、口内の違和感と歯が動く独特の痛みに加え、やはり顎の調子が気になりました。特にワイヤーを調整して数日間は、噛み合わせが微妙に変化するためか、顎の音が以前より大きく感じられたり、軽い鈍痛が続いたりしました。その都度、先生に状況を伝え、顎を安静にするためのアドバイスを受けたり、食事を工夫したりと、二人三脚で乗り越えていきました。幸い、私の場合は、先生の的確な指示と自分なりのケアが功を奏し、数ヶ月経つ頃には、治療開始前よりも口の開閉がスムーズになり、食事中の不快な音も明らかに減っているのを実感できました。そして約二年半に及んだ矯正治療が終了した今、かつて私を苦しめた顎の痛みや開口障害はほとんど感じなくなりました。